木造ディンギーを造ってみたら、結構色んな金物(ハードウェア)が必要なことが分かった。使ったのはどれもステンレス製だが、アマゾン号に使われていた金物はもちろん真鍮あるいはブロンズだし、今だってクラシックな趣を持つ船の金物はブロンズ製(シリコン・ブロンズ)だ。
Tally Hoはつい最近作業小屋を出て近々マストが立てられるが、そのハル構造を補強している金物は特注のシリコン・ブロンズ製で、その鋳造作業とその後の研磨の様子にはちょっと感動したな(だってハル内装で隠されたその奥の金物を目にすることはもう二度とないんだもの)。それにしても、大きな木造艇建造のためにはでっかくて重いブロンズ部品をワンオフで鋳造しないといけないし、その前作業として木で正確なモールドを造らなければいけないのかと思い知らされた。
昔の帆船にキャプスタンがあるのは知ってたし、ランサムは「ヤマネコ号」のキャプスタンを4人がかりで廻している子供たちのイラストを描くために、ウィンダミアの自宅庭で知り合いの子供に模擬キャプスタンを廻してもらいそれをスケッチしている。
Tally Hoにも当然キャプスタンがあり艇体と一緒に運ばれてきていたが、なにしろ100年前の代物だし、長く使われず放置されたからだろう、錆び可動部は固着し、その一部は割れて失われていた。もちろんこのキャプスタンも新生Tally Hoには設置せねばならない。
でも探せば人はいるもので、このキャプスタン修復動画をアップしていたのは、ヴィンテージ工作機械修復(古いバンドソーから蒸気機関車の部品まで色々)をやっている
Keith Ruckerというオジサンで、Georgia Museum of Agriculture(ジョージア農業博物館)で古い農業機械の修復と作動をボランティアとしてやっているそうだ。
Leoから送られてきたキャプスタンの現状は写真の通り。

下部の頑丈そうな取り付け部の上に糸巻状のキャプスタン本体があり、その上のキャップには前(と隠れている裏)にクランク軸が見える。このキャプスタンは四人で廻し棒をグルグル押すのではなく、キャプスタン軸と90度づれたクランクを二人で廻す方式の様だが、その方が場所を取らない。
上部キャップは割れていて、その奥に回転方向を90度変化させるベベル・ギアがある。キャプスタン軸もクランク軸も錆び固着しているので、分解するにはまずキャップを外す必要がある。
割れているキャップを熱し軸から外そうとするが外れない。多分壊れるだろうと予想しつつ、助っ人を頼みキャプスタン軸からキャップを外すためにジャッキで押し下げつつ、キャップを下から叩く。
やっぱり割れた。キャップ内部にはベベル・ギアとクランク軸が見える。この後クランク軸を熱し、叩き、抜き取る。キャプスタン本体から軸を抜くために大掛かりな自作ジャッキ付き道具で軸を押す。
これが分解されたキャプスタン(と割れたキャップ)。
再利用できそうな部品は錆を落としサンドブラストで綺麗にするそうだが、割れちゃったキャップは作り直し。
このキャップの鋳造を請け負った方(鋳造モールド作りを専門にしている)も別チャンネルで動画を上げている。
探せば日本だってこうした仕事を受けてくれる技量の在る工場(町工場あるいは個人)はあるのだろうけれど、どうやって探し出したらよいのか見当もつかない。木造大型艇を造るって本当に大変なことだな。
posted by サセックス卿 at 08:25|
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