2023年12月02日

貰い物の木材で依頼品製作

鎌倉に工房をお持ちのマヨリカ焼作家さんから、個展のためタイルを展示するフレームやタイル立て、お皿立ての製作を依頼された。4種類、合計10個以上になろうか。

使う材は工房に長年置いてあった3m余りの材木3本。表面が汚れ、傷んでいるため木目も定かでないのだが、そのうちの一本はマホガニーに似た木だが多分ラワンだろう。

その長さでは車に積めないから800mmほどにカットし、家に持ち帰り4面を削ってみた。

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一番長く幅広の木材は写真の様に完全な柾目板だ。160mm幅で3mを超える柾目板か、随分と大きな樹だったのだろうな。
依頼主と相談の上、タイル(何種類ものハーブ草を描いたタイル20枚)を置いて飾るためのフレームは、この材の柾目を広く正面に出しリボン・パターンが綺麗に出ることを期待する。別のタイル絵には板目の捻じれた木目を出すことにした。

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厚みは40oあるのだが、汚れや傷みを削っていくと36mm採れるかどうか。木口から木目に沿って割れが入っている個所もあるけれどそれは接着剤(CAグルー)で補修してやることにする。

ここ一か月、これらの製作に忙しくすることになりそうだ。
まずはインフィード側の余裕がなかったため、バンドソーと作業台を移動させることから。



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2023年11月22日

これはマホガニーか?

鎌倉に工房をお持ちのマヨルカ焼き作家氏からこれまで色々と木工製品製作(多くはタイルを飾るためのフレームなど)を依頼されてきたが、年が明けてから個展をなさるそうで、そのためにタイル、複数タイルを組み合わせたタイル絵などなどを飾るためのフレームやら置台などの依頼があった。

先日工房へお邪魔し依頼品のイメージなどを相談してきたが、その際に「貰った木が置いてあるのだけれど、これで造ってもらえますか?」とのことで、工房の隅っこに押し込んである長い材木を取り出してみた。埃や汚れで表面が覆われ、遠目には木目が見えないが、節もなくはっきりした板目パターンもないから杉や檜ではあるまい。ラワンかなと思いつつ、3000x190x40ほどの長い材を引っ張り出し、持参したジグソーで木口を切ってみたら、緻密な柾目板。そのお陰で長い材なのに反りもない。

木口だけ見ても木目が緻密なのは分かるけれど、結構重いしラワンではないかも。
200o程の木っ端を持ち帰り、4面にカンナをかけてみた。すると、
  • 側面(板目)に明瞭なパターンは見えない
  • 捻じれて成長しているようで木口の柾目パターン角度が両端で異なっている
  • なにより削った表裏面(柾目面)に「リボン」が見える
ふむ、こいつはマホガニーかも知れない。しかも3mを超える柾目板だ。

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左がアフリカン・マホガニー、右がマホガニーかと思える材

本物マホガニーに分類される3種のうち学名に「マホガニー」を持つキューバン・マホガニーはすでに樹が絶滅、それより葉っぱの大きなホンジュラス・マホガニーは伐採禁止(あと一つメキシカン・マホガニーは木が小さいから使われないそうだ)。ゆえに私がNancyに使ったマホガニーは「マホガニー」の名前で売られているけれど本物マホガニーではなく別の属のアフリカン・マホガニーだ。

さてさて、このマホガニーと思える材はどの属の樹なのだろう?まさか本物マホガニーではあるまいから、どこで育ったどういう樹なのだろうか?見た目の似た南洋材は多く存在するからな。木口の道管のサイズや整然とした様子などを顕微鏡で見ると分かる人には分かるそうだが、まぁ「マホガニー」に似た材を使うことが出来ることに感謝しておこう。

個展に来る人には「このフレームの材はマホガニーみたいでしょ?本物じゃないけど」と言うことにしよう。
それにしても、写真でしか見たことがないが、本物マホガニーの樹形にはため息がでるな。太い幹が真っすぐに伸び、下の方には脇枝はなく、上部だけに枝葉が生い茂っている。無節の真っすぐな材が採れるわけだ。



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2023年11月11日

マストの下にコインを置く

マストの下、マストステップにコインを置きその上にマストを立てると言う儀式はランサム作品のどこかで読んだ記憶があるが、それがどの巻だったのかはっきりしない。ジョンがマストを折ってしまい、新造マストを立てた時のことだったか、あるいはスカラブ号進水式の時だったか。
それはともかく。

マスト下にコインを置くと言うのはローマ時代から続く儀式だそうで、Tally Hoのマスト下にも当然コインがあったはずだが、それは失われてしまった。
3年も前のYouTube動画がお薦めに出てきたのだが、それは英国の若者(金属鋳造モールド作りをしているようだ)がLeoTally Hoのマスト用にソブリン金貨のレプリカを作ってあげようかと持ち掛け、そのレプリカ鋳造を請け負うという内容だった。

そのソブリン金貨、直径22mmの小さな金貨はその若者の母親が18歳の誕生日に貰い、ペンダントにしつらえてあったものだがレプリカ鋳造のために喜んで貸してくれたそうだ。シリコンで金貨のモールドを作り、鋳造作業自体は別の人の助けを借りていた。3年前の話だから、1908年のソブリン金貨(表はエドワード7世の肖像)のブロンズ製レプリカは今はLeoの手元にあるのだろう。そして次回あたりのエピソードで正式にマストを立てる時にマストステップに置かれるのだろう。

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本物の金貨を購入しマストステップに置くことだってできただろうが、Tally Ho修復に感動し自分も出来ることで貢献したいという若者の申し出だもの、ブロンズ製レプリカの方が買った金貨より価値があるよな。

Tally Hoのために自分の出来ることで何か作ろうという人は他にもいて、そのお一人は楽器を作ってあげると持ち掛けLeoはフィドル(ヴァイオリン)を選んだそうだ。Leoから船造りに使った木材(メープル、スプルース等)が送られてきて、それらを使いフィドルを一丁作っていた。



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2023年10月30日

Tally Ho:リギンはダイニーマ

10月29日に公開された動画でTally Hoにマストを立てていた(後でディスマストしてたけど)。

マストなどリグの製作はポートタウンゼントの業者に頼んだわけだが、その素材のスプルースはLeoがカナダで買い付け、カナダの製材所でマスト用に製材した物だ。太いスプルースの丸太にはきちんと「Tally Ho」とペンキで書いてあった。

丸太木口(と言うのか?)に書かれたカットラインを見ると、ただのフラット・ソーンではなくクウォーター・ソーンとも違うけれど、木目が45度になる部材と柾目材が採れるようにカットしているみたいだ。このマスト用材とデッキ用のYellow Ceder(米ヒバ)材をでっかいトレーラーがポートタウンゼントまで運んできたわけだ。

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Standing Mastと言っていたけどマストはデッキを貫きキールのマストステップにきっちり嵌められていた。
Nancyのマストステップはまだ捨てずにとってある)

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オリジナルのマストのリギンは亜鉛メッキ鉄製ワイヤーだったそうだが、現在は質の良い亜鉛メッキワイヤーが入手できないとのこと。もちろんステンレス製ワイヤーが選択肢だろうが、Leoの選択は「ダイニーマ」だそうだ。ステンレスワイヤーはスプライスが難しいがダイニーマなら容易にスプライスできる。

ずっとマストが立っていなかったTally Ho、何十年ぶりか(もっとか?)でマストを得た船、Tally HoLeoもさぞかし嬉しいことだろう。


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2023年10月26日

秋の恵み(昆虫)

キチョウはいまだに庭を盛んに飛び回りミモザやネムに産卵しようと狙っているが、なかには家で羽化した個体もいるに違いない。

レスキューしたアゲハの幼虫はどれも蛹になっている。あちこちにいる蛹はこれから羽化するのだろうか?羽化して成虫で冬を越すのか、あるいは蛹のまま春の訪れを待つのだろうか?

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こいつは植木鉢置きの垂直面で蛹になろうとしているが、食べていたミカンの枝から20cmも離れていない。横着に近場を選ぶ奴もいるんだな。
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2023年10月25日

秋の恵み(植物)

酷暑の記憶もあっという間に薄れ、秋の深まりとともにあちこちの森で実や種を探すのが楽しみになってきた。

いつもルカと出かける森、今の季節は種が凄いからスリッカー持参で行くのだが、人の通らない危険な道を歩いてみたら、珍しい「アケビ」を見つけた。ツタの先に数個だけ薄紫色の細長い実を付けていた。一度だけ食したことがあるが中の種が口の中一杯に広がったので、綺麗な色だけを愛でようと二つだけ採ってきたが翌日には黒く変色してしまった。野山に置いておくに限るな。

同じ道でこれまで気づかなかった山椒の大木(雌樹)に赤い実がびっしり付いているのも発見。木が大きすぎて採ろうにも手が届かない。翌日、枝に引っかけ手元へ手繰り寄せるための棒を持参し、春の実山椒ならぬ秋の赤山椒を沢山収穫してきた。春に採り乾燥させペッパーミルに入れてあるヤツに混ぜてやろう。と言っても小さな硬く黒い種を取り出すのが凄く面倒なんだけど。

もう一つは去年も拾ってきた植物園のオニグルミ。
数日前に強い南風が吹いたからか、枝から折れ房ごと落ちているのを見つけた。低い生垣掻き分けて探すのだが、そんなことする人はいない。この房だけで8個のクルミが付いている。

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外皮は簡単に取れるが、殻についた渋皮のような奴を取るにはワイヤーブラシが必要、しかもタンニンが凄い。
乾かしたらフライパンで煎り殻に割れ目ができたら、そこにスクレーパーねじ込んで割り、中の実を取り出す。
手間ばかりかかる秋の収穫。


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2023年10月16日

Tally Hoのキャプスタン

木造ディンギーを造ってみたら、結構色んな金物(ハードウェア)が必要なことが分かった。使ったのはどれもステンレス製だが、アマゾン号に使われていた金物はもちろん真鍮あるいはブロンズだし、今だってクラシックな趣を持つ船の金物はブロンズ製(シリコン・ブロンズ)だ。

Tally Hoはつい最近作業小屋を出て近々マストが立てられるが、そのハル構造を補強している金物は特注のシリコン・ブロンズ製で、その鋳造作業とその後の研磨の様子にはちょっと感動したな(だってハル内装で隠されたその奥の金物を目にすることはもう二度とないんだもの)。それにしても、大きな木造艇建造のためにはでっかくて重いブロンズ部品をワンオフで鋳造しないといけないし、その前作業として木で正確なモールドを造らなければいけないのかと思い知らされた。

Leoのビデオとは別の方のチャンネルがお薦めに出てきたが、それはTally Hoのキャプスタン修復動画だった。
昔の帆船にキャプスタンがあるのは知ってたし、ランサムは「ヤマネコ号」のキャプスタンを4人がかりで廻している子供たちのイラストを描くために、ウィンダミアの自宅庭で知り合いの子供に模擬キャプスタンを廻してもらいそれをスケッチしている。

Tally Hoにも当然キャプスタンがあり艇体と一緒に運ばれてきていたが、なにしろ100年前の代物だし、長く使われず放置されたからだろう、錆び可動部は固着し、その一部は割れて失われていた。もちろんこのキャプスタンも新生Tally Hoには設置せねばならない。
でも探せば人はいるもので、このキャプスタン修復動画をアップしていたのは、ヴィンテージ工作機械修復(古いバンドソーから蒸気機関車の部品まで色々)をやっている
Keith Ruckerというオジサンで、Georgia Museum of Agriculture(ジョージア農業博物館)で古い農業機械の修復と作動をボランティアとしてやっているそうだ。

Leoから送られてきたキャプスタンの現状は写真の通り。
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下部の頑丈そうな取り付け部の上に糸巻状のキャプスタン本体があり、その上のキャップには前(と隠れている裏)にクランク軸が見える。このキャプスタンは四人で廻し棒をグルグル押すのではなく、キャプスタン軸と90度づれたクランクを二人で廻す方式の様だが、その方が場所を取らない。

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上部キャップは割れていて、その奥に回転方向を90度変化させるベベル・ギアがある。
キャプスタン軸もクランク軸も錆び固着しているので、分解するにはまずキャップを外す必要がある。

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割れているキャップを熱し軸から外そうとするが外れない。多分壊れるだろうと予想しつつ、助っ人を頼みキャプスタン軸からキャップを外すためにジャッキで押し下げつつ、キャップを下から叩く。
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やっぱり割れた。キャップ内部にはベベル・ギアとクランク軸が見える。この後クランク軸を熱し、叩き、抜き取る。
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キャプスタン本体から軸を抜くために大掛かりな自作ジャッキ付き道具で軸を押す。
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これが分解されたキャプスタン(と割れたキャップ)。
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再利用できそうな部品は錆を落としサンドブラストで綺麗にするそうだが、割れちゃったキャップは作り直し。
このキャップの鋳造を請け負った方(鋳造モールド作りを専門にしている)も別チャンネルで動画を上げている。

探せば日本だってこうした仕事を受けてくれる技量の在る工場(町工場あるいは個人)はあるのだろうけれど、どうやって探し出したらよいのか見当もつかない。木造大型艇を造るって本当に大変なことだな。


posted by サセックス卿 at 08:25| Comment(0) | etc.